織り成す
第52代理事長 柳野 沙織
はじめに
私たち小金井青年会議所は、1974年3月21日に全国で557番目の青年会議所として、初代理事長関口弘治先輩をはじめとする先輩方の熱い思いにより誕生しました。設立以来、52年という決して短くない年月の中で、小金井青年会議所を取り巻く環境は、人々の生き方や考え方、働き方に至るまで大きな変化を繰り返してきました。今まさに目まぐるしく成長し続けている技術革新の時代において、柔軟に会の運営が行えているのも、現小金井市長白井亨様をはじめ、歴代の小金井市長、そして行政関係者の皆様、小金井市内関係諸団体の皆様、東京ブロック協議会内各地会員会議所理事長をはじめとするメンバーの皆様、また、今日まで常日頃から心温まるご支援、ご協力を頂戴している関根吾郎先輩をはじめとする小金井青年会議所シニアクラブ先輩諸兄姉のおかげであり、深く感謝し、この場をお借りして厚く御礼申し上げます。
本年度の小金井青年会議所は、様々な変化を取り入れながら、一人ひとりが何色にもなれるような柔軟な姿勢で、仲間とともに情熱を持ち、未来に繋がる運動をデザインし、組織と地域のさらなる発展に尽力して参ります。
織り成す
本年度のスローガン「織り成す」には、一人ひとりの個性や能力を尊重し、様々な情報や技術を整理しながら、良い部分は積極的に取り入れ、新たな価値を創造するという思いが込められています。そして、このスローガンのもと、仲間との絆を深め、多くの方々から支持され、期待される団体へと歩みを進めて参ります。一本の細い糸でも、複数の糸を組み合わせ、紡ぐことで、強く、張りのある美しい織物へと変わります。私たちも、それぞれが魅力的な個性を持った一本の糸として、地域という大きな糸と織り交じり、色鮮やかな活動を創り上げたいと考えています。
小金井青年会議所は、私に「つなぐこと」の大切さを教えてくれました。入会当初の私は、青年会議所の役割を十分に理解できておらず、地域課題に対してもどこか他人事のように感じ、目の前の出来事を当たり前のものとして受け入れていました。そんな中、2023年に小金井青年会議所が設立50周年を迎えた際、私は専務理事を仰せつかり、記念式典や記念誌に携わることになりました。
歴代の先輩方から当時の話を伺い、過去の写真や資料をひも解きながら、地域の課題解決に向けて先輩方がどれだけの時間をかけ議論を繰り返し挑戦し続けてきたのか、その軌跡を改めて知ることができました。そのことは、小金井青年会議所が前向きな姿勢で、多種多様な人々や地域と向き合い、絶え間ない挑戦を続けてきた証そのものです。この歴史は、私たちにとってかけがえのない財産であり、これまで積み重ねてきた挑戦の軌跡に、新たな挑戦を織り交ぜながら、次世代へと伝えていかなければなりません。だからこそ、その財産を胸に、人と人とが建設的に話し合いを重ね、様々な要素を取り入れながら織り成していくことで、未来が拓けると信じています。
地域を織り成す
地域社会は多様な要素から成り立っています。文化的背景や職業、年齢層が異なる市民が共存し、それぞれの特性を活かしたコミュニティが形成されています。しかし、こうした多様な意見が必ずしも社会に反映されているとは限りません。だからこそ、私たちは多様性を尊重し、地域住民の声に耳を傾け、持続可能な地域社会の実現を目指して参ります。
小金井市はかつて人口減少が懸念されていましたが、令和3年には12万人を超え、今なお微増傾向が続いております。しかし、老年人口の増加が顕著であり、今後の少子高齢化のさらなる進行が予測されています。この中で、20代から30代の若年層は、地域の未来を形成する重要な存在であり、彼らの転入維持と転出抑制が課題解決の鍵となっています。
私たちは、このような人口動態の変化を踏まえ、地域の未来に責任を持ち、多様な価値観を持つ人々が、小金井の地で生活し、働き、家族を育むことができる魅力あるまちづくりに、市民、行政、企業が一体となり、創造的な解決策を見つけることを目標に取り組んで参ります。
また、市民一人ひとりが心身ともに健康であることは、地域社会の活力を保ち、持続可能な発展に欠かせません。最近ではスマートフォンやパソコン、デジタルゲームの利用時間が増加、コロナ禍で在宅ワークやオンライン会議が普及したことにより、運動習慣が失われつつあります。運動習慣の低下は、健康問題の増加や精神的な不調、さらには地域社会の活力低下など、さまざまな課題を引き起こす可能性があります。健康づくりを通じて地域の交流を促し、地域全体での活性化につなげて参ります。
小金井青年会議所ならではの柔軟な発想と行動力を活かし、行政や企業では対応しにくい課題に対しても、私たちだからこそできる活動を展開し、地域社会に貢献して参ります。
人と織り成す
現在、小金井青年会議所が直面している大きな課題の一つは、会員数の減少です。この減少は、組織の活力や活動の多様性が失われ、いくら地域課題を発見し解決に向けて取り組もうとしても、十分な活動ができず、地域のためにならないという事態になってしまいます。毎年のように会員拡大はテーマの一つになりますが、継続的な人財確保の方法を見直さなければ、本当の意味での解決にはつながりません。私たちがどんな団体で、どんな活動をしているのかを知ってもらう機会や、交流の場をつくり新しい人の輪を形成することも勿論大切な取り組みですが、それらが断片的になってしまうと、新たな仲間を迎え入れる接点が
途切れてしまいます。だからこそ、本年度は、継続的に実施可能で、且つ関心を持たれやすい魅力的な拡大運動を展開して参ります。
青年会議所には、背景や職業、年齢層の異なるメンバーがそれぞれの特性を持ち寄り、地域課題を真剣に考え、明るく豊かな社会の実現を目指す多様な仲間が集う場です。多角的な視点や建設的な意見を受け入れることで、創造性が生まれ、斬新なアイデアが芽生えます。この多様性こそが青年会議所の魅力であり、私たちの最大の強みです。この魅力を多くの人に伝え、そして、新しい仲間を迎え入れ、それぞれの可能性を発揮できる環境を整え、共に成長し続ける組織づくりを進めてまいります。そして、自身の成長や地域に還元できる力をより高めるため、様々なスキルを積極的に学び、取り入れ実践することが重要です。
こうした成長と絆を大切にする姿勢が、多様な人財が活躍できる土壌となり、メンバーひとりひとりの魅力をさらに高めていくと確信しています。
歴史と伝統、そして今を織り成す
設立当初、先輩方が掲げた「いずれは小金井市の主要な場面でJC出身者がリーダーとして活躍する」というビジョンは、今日まで確実に実を結んでいます。多くの先輩方が、市内関係諸団体や企業、行政等様々な場面でリーダーとして地域を牽引し、小金井市の発展に大きく寄与してきました。この地域密着型のリーダーシップの継承こそが、小金井青年会議所の歴史に刻まれた大切な伝統であり、私たちの誇りでもあります。
時代は常に変化しており、私たちはその中で新たな価値を創り出すことが求められています。先輩方が築いてきた歴史を尊重しつつ、最新の技術や新しい仕組みを積極的に取り入れ、進化し続けることで、小金井青年会議所「らしさ」をさらに明確にして参ります。地域の皆様やメンバーにその価値を伝え、私たちの強みを認識していただくことで、メンバーに小金井青年会議所の会員であることの誇りを醸成し、また対外的な認知度も高めることで、組織としての魅力をより一層強化していきます。これこそが、小金井青年会議所のブランド価値を高め、これからも地域に愛され、信頼される存在であり続けることができると考えております。
私たちは、これまでの歩みを大切にしながらも、新しい挑戦を恐れずに、どんな時代でも適応できる組織へと改革を進めて参ります。
そして、時代の変化に対応した新たな価値を作り出すことは、私たちのみならず、小金井市そのものにも共通する課題です。小金井市の象徴でもある小金井桜は、名勝指定100周年を迎えました。小金井桜をはじめとする地域の文化資源を大切にし、その魅力を広める活動を行います。この事業を通じて、市民の皆様とともに桜の魅力を再発見し、地域の歴史や文化を伝えていくことを目指し、伝統を次代へと受け継ぐ取り組みを進めていきます。
結びに
本年度の小金井青年会議所は、様々な変化を取り入れながら一人ひとりの特性を活かした一本の糸になり、地域の発展のために紡いでいきます。多様な要素を織り合わせることで新たな価値を創造し、小金井市の発展に繋げていけるように、未来をデザインし、地域全体が一つの美しい織物となれるよう、笑顔溢れる明るい豊かな社会の実現のために努めて参ります。
そして、常に組織を見つめ直すことを忘れずに、共に手を取り合い、希望に満ちた未来を信じ描きながら、何世代にも亘り紡がれていく“つながり”を大切にし、柔軟で魅力的な組織づくりを目指してまいります。引き続き、皆様の変わらぬご支援とご協力を心よりお願い申し上げます。